六年一組・変人同盟

四月。新しいクラスで早速の自己紹介。
といっても、せいぜい「野球が好きです」というくらいで、ちょっと退屈。
そういう私だって、「クラブにがんばろうと思います」とか、その程度の自己紹介だったけど。
でも、るーさんの自己紹介はこんなだった。
「瑠菜です。趣味は将棋。なんか、周りの人から変人だと言われています」
みんなは一斉に爆笑したけれど、私は、何となく仲良くなれそう――と、そう思った。

そんなある日、学校から帰ろうとすると、るーさんが、道に寝っ転がっていた。
「何してるの?」
「空見てるの」
「危ないよ、道路に寝転んだりして」
「うん……よけてくれるよ、車」
「でも、車だって気づかないと思う。寝転んでいるなんて」
「じゃ……そこで見てて、私のこと。それなら、車からもよく見えるから」
「うん……いいかも、それも」
結局、ふたりしてそのまま並んで空を見ていたんだった。

そして、もう夏休みも近い頃だ。教室では朝から噂でもちきりだ。通学路の途中の公園に、怪しい人がいるというのだ。
声をかけられたとか、追いかけられたとか言う話をみんながひそひそ話していた。

でも、るーさんは言う。
「公園通って帰ろうよ」
「だって、公園に変な人がいるって」、と私。
「本当にいるの?」
「だってみんな話してたじゃない」
「誰も会った人いるのかな、本当に」
「でも、みんな言ってるじゃない」
「じゃ、追いかけられたのは誰?」
「えっと……あれ?」
「そう、知り合いの知り合いとかは会ってるけど、本当にあった人はいないの。それに……」
「それに?」
「大丈夫……多分、私知ってる人だから」

そうこう話しているうちに、ふたりは公園に着いた。そこで見かけたおじさんに、るーさんが話しかける。
「こんにちは」
「いや、久しぶりだね」
「おじさん、噂になってるわよ」
「噂ってなんだい?」
「公園に変なおじさんがいて、声をかけられたり追いかけられたりしたって大変なの」
「ううん、声くらいかけたかも知らんが、追いかけるなんてのは知らないな」
「るーさん、大丈夫? 話しかけたりして」
「大丈夫、知り合いだから」
「知り合い?」
「おじさんったら、公園のベンチで詰め将棋してたの。私も将棋やってるし、少し教えてもらったの」
「なかなか筋のいいお嬢さんだったね」
話してみると、そんなに変な人じゃなさそうだった。るーさんとおじさんが話す将棋のことは、ちょっとわからないけど、とっても楽しいことを話しているらしいというのは、よくわかった。
「どう、変な人じゃなかったでしょう」
「うん。でも、どうして変な人になっちゃんだろう?」
「そうよね。追いかけられた人なんていないのにね」

いつの間にか秋が来た。小学校生活もだんだん少なくなって、春からは中学校――と、るーさんが、私立中学に行ってしまうんだと話してきた。それじゃ、お別れじゃない。

ふたりはふたりして、一週間ほど落ち込んで、やがて、どちらからともなく、タイムカプセルを埋めようという話になった。

卒業間際の三月。花壇の隅に集合。
「ね、覚えてる? 公園でおじさんと会ったの。あのとき、るーさんって、本当に変人だと思った」
「りんだってそうでしょ。おもしろそうだからって、ついてくるんだもん」
「私たち、ふたりとも変人?」
「そうそう、とびっきりの」

これからは、別々の生活。いつまで、「私たち」でいられるのかわからないけど、私は小学校最後の年を決して忘れないだろう。

「変人同盟の記録をここに残す」と、いう文字を、私は少しだけまぶしく感じた。


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Nagi -- from Yurihama, Tottori, Japan.
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