なぜ壁紙の2次配布はいけないのか?/著作権の話

はじめに

コミュータウンで公民館の掲示板に、「誰か壁紙をください」という書き込みをしたら、「壁紙の2次配布は禁止です」という返事をもらったことはありませんか?
2次配布とはなんでしょうか? そして、なぜ、「壁紙をください」というのがいけないのでしょうか?
ここではそれについてお話しすることにしましょう

2次配布とは何か?

みなさんは、壁紙(パソコンとか、自分のホームページとかに張る画像)を入手するときにどうされるでしょうか?

さて、この中で、「他の人が持っているのをもらう」というのが、実は問題になることがあります。
素材屋さんや、素材屋さんでなくても自分で作った壁紙を配る(配布する)のを、「一次配布」と言います。
あまり、「一次配布」という言葉が使われているのは見たことがありませんけど。
つまり、作者自身が直接配布している……ので、「一次配布」というわけです。

これに対して、自分自身が、作者ではなく素材屋さんから壁紙をダウンロードしてきたり、ほかの誰かが作ったものを他の人にあげる(つまり配布する)のを、「二次配布」ということになるわけですね。
逆に言うと、(作者以外の)誰かが持っている壁紙を譲ってもらうことは、「二次配布を要求している」ことになります。
そうして、二次配布は「いけないこと」とされています。
それは、「著作権」という権利のお話になってくるわけです。

著作権のお話

さて、いよいよ著作権のお話になってきました。
著作権とは、「文章や絵や音楽を作った人が持つ権利」です。
これにはいろいろな権利があるのですが、ここでは、次の2つの権利に限ってお話をさせて頂きます

また、この後の文章で、「自分が作ったもの」とか、「作った人が」という言い方が出てきます。
これは、実際には、「著作権の保持者」ということになるのですが、ここでは、「作った人」という言い方で統一しておきます
(何かを作った時に、著作権は作った人のものになりますが、著作権は譲ることができるので、実際には作った人と著作権者が一致しないこともあります)

  1. 公開権……自分が作ったものを公開する・あるいは公開しないことを決める権利
  2. 複製権……自分が作ったものを複製する権利
  3. その他もろもろの権利

厳密に言えば、「公開権」は、著作権ではなく、著作人格権というものに分類されますが、ここでは一緒にお話ししたいと思います。
細かいことを言えば、上で述べたように「著作権」は譲ったり放棄することができますが、「著作人格権」は、作者と分けることができないと考えられています

公開権

自分が作ったものを公開したりあるいは、公開しないことを決める権利です。
自分が作ったものを、他人が勝手に公開しては気持ちが良いものではありません。やはり作った本人として公開したいものです。また、自分が作ったものでも、いろいろな理由(気に入らない・仲間内だけで紹介したいなど)で、広く公開したくない時には、公開しない権利があります。
このように、自分が作ったものを公開する・公開しないのは作者だけで決められる権利として考えられています

複製権

作ったものを複製する権利です。
これは、著作権の要とも言える権利で、作品を複製できるのは、作者本人に限定されます。
ただし、こちらは(著作人格権ではなく)著作権に属することであり、譲ったり、他の人に「複製を許可」することができます。

壁紙の二次配布がいけないわけ

まずは、法律論から

ここまで来て混乱させるようで申し訳ないのですが、壁紙(など)の二次配布は、いかなる場合でも禁止されている訳ではありません。
もしも、作者が、「二次配布をしてもOK」と明示していれば、この場合は、その壁紙を他の人にあげるのは問題ありません。
ただし、壁紙を他の人にあげようとするその時点でも、「二次配布OK」なのかは調べる必要があるでしょう

さて、二次配布OKとされていない場合。
つまり(大部分はそうですが)「このサイトから直接ダウンロードしてください」と要請されている場合、これは、かならず、「このサイトから直接ダウンロード」してください。
基本は、「本来作者以外は複製ができない」ものを「サイトから直接ダウンロード」という形で許可されているのです。ですから、許可されている範囲で使用しましょう

でも、どうして二次配布はだめなの?

さて、「著作権」という観点では単純に、「作者が認めた以外の複製はだめ」ということになります
でも、これが売り物であれば、まあ勝手にコピーされたら儲からないだろうな……という気はするものの、多くの、「無料で提供」している素材屋さんの場合でも、やっぱり、二次配布は(多くの場合)禁止されています。
これはどうしてでしょうか?

ひとつには、いくら無料で配布しているといっても自分の知らないところで自分の作品がコピーされているというのはいやなものですよね
たとえ、直接顔は見えないにしても、きっちり自分のところに取りに来るという手順を踏んで欲しいとそう思います。
そしてもうひとつ、「公開権」の問題があります。
サイトから直接ダウンロードしてもらえば、少なくとも、「今後公開したくない」と判断したとき、それ以上コピーが広まるのを防ぐことができます。
これに対して、「著作権」を無視して2次配布が行われていたら、「もう公開したくない」という作者の権利を踏みにじることになります。

そして、実際には、気に入った壁紙の作者がいやな気持ちになることがないように、作者の持つ著作権を尊重するというのが一番わかりやすい理由であるとは思うのですね

おまけ……コピーできる場合

実は、著作権が「限定」される場合もあります。
ここでは、

について、お話をしておきます。

私的利用における著作権の制限

私的利用……自分が個人的に楽しむ・使う場合であれば、実は作者の承諾を得ることなくコピーが可能です。
こういう条項は確かにあります。しかし、だからといって早合点してはいけません

私的利用とは、あくまでも「自分が楽しむ」場合であって、他の人にあげるのは私的利用とは見なされません。
いわんや、ネットワーク上で不特定多数の人に見える状態は、たとえ、「お金儲けが目的ではない」「これは自分の趣味のホームページだ」といっても、私的利用とは見なされません。
ですから、まあ、気に入ったホームページ(素材屋さんに限らず)の画像をダウンロードして自分のパソコンの中だけで見る……のなら、OKです。
ただし、この場合も、「ダウンロードさせない仕掛け」がある場合、そのプロテクトを破ってコピーすることは(私的利用の範囲であっても)著作権の侵害になりますので注意が必要です

引用における著作権の制限

あと、よく間違えられるのは、「引用」は複製と見なされないということです。
つまり、自分の主張を述べるために、あるいは、何かを批判(中傷じゃないよ)するために、その材料として、著作物を引用することは著作者の許可がなくても許されます。

ただし、この場合、あくまでも、「引用」であって、以下のような条件が付きます

この条件が満たされている場合には、「引用」とみなされます。

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Nagi -- from Yurihama, Tottori, Japan.
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